シナリオ作成講座―シナリオのイメージを持つ―
Gray RoomN◎VAサポートコラム

 FEAR系のゲームはオフィシャルのシナリオサポートは非常に充実している。そのため、月に一回などのペースで遊んでいる場合はさほど遊ぶシナリオに困ることはないだろう。
 だが、やはり馴れてくれば自分でシナリオを作りたくなるのが人情というものだ。

 とはいえ、馴れていないとシナリオはそう簡単に書けるものではない。
 特にN◎VAのシナリオ構造というのは他のシステムに比べて独特であるため、馴れていないとどうやってシナリオを作ればよいか分からなくなってしまうだろう。
 そこで少しでもシナリオ作成の助けになるように今回から数回に分けて僕流のシナリオ作成テクニックを書いていこうと思う。

 ただこの先を読む前に一つ注意してほしいことがある。ここに書かれていることはあくまで僕流の作り方であり、また僕個人の主張にすぎないということを意識してほしいのである。
 シナリオ作成というのは人によって色々と違うテクニックがあり、それゆえにシナリオ作者ごとの個性が出てくるものだと僕は思っている。上手いと思ったテクニックは吸収していくべきだが、何でもかんでも真似てしまっては個性というのは出にくくなると思う。
 そのためこれから述べるのはあくまでこれはシナリオ作成の一例に過ぎず、シナリオを作る際の参考程度に考えてほしい。

 シナリオ作成講座の第一回にあたる今回は実際にシナリオの作成に入る前のシナリオイメージについて考えていきたいとおもう。


まずはどこからシナリオを作るのか?

 シナリオを作る際、貴方はまずどこからシナリオを作ろうと思うだろうか?いや、貴方は何をきっかけにこういうシナリオを作ろうと思うだろうか?
 このきっかけというのは「今度例会があるからそのために自作シナリオを用意していく」といった様な都合によるものではない。シナリオを作ろうと思った際、そのシナリオを作ろうと思うきっかけとなったイメージのことだ。ここでいうイメージとはシーンやゲストだけではなく、こういうシナリオを作ろうと言う程度のもので構わない。
 シナリオを作ろうと思った際には、明確かどうかはさておきイメージが絶対にあるはずだ。むしろ、そのイメージ無しでシナリオを作ることはできないだろう。
 このイメージをさらに明確化するために、イメージを3つのタイプにカテゴライズしてみた。
 複数のタイプにまたがっていることもあるだろうが、大抵の場合貴方が持っているイメージは以下の3つ(もしくはその組み合わせ)に分類できるのではないかと思う。

1.シーン(セリフ)
 なにやらカッコいいシーンやセリフがパッと思いついてそのシーンやセリフからイメージを膨らませるパターンだ。
 素晴らしいシーンや演出、セリフなどはシナリオ段階でアクトを成功させる非常に効果的な武器だ。それの掘り下げもしっかりしやすいところから印象に残るシナリオを作りやすいだろう。
 周囲から話を聞いてみると比較的このパターンが多いようだ。

2.テーマ
 そのシナリオの骨となるテーマから物語を作るパターンだ。
 テーマというのは例えば“無力な少年を守るカブトの話”、“理想を現実にするために理想を棄てた男の話”、“復讐をテーマとした話”などといったものだ。
 テーマを先に決めておくことでシナリオの演出に統一感を持たせたりといった小技を効かせやすくなる。
 ちなみに僕はこのパターンが多い。

3.ゲスト
 こういうゲストが出てくる場合、そいつはどんなことをするのだろうか?というところから物語を作るパターンだ。
 このパターンではゲストのキャラ性がしっかりしているため、魅力的なゲストを演出しやすい。
 僕はちょこちょことゲストから話を膨らませることが多いのだが、多少話を聞いた感じではこのパターンでシナリオを作成するのは意外と少ないようだ。


イメージを作るためには

 シナリオを書く際にはイメージが必要だと書いたが、ではシナリオ作成をしたくてもイメージがない場合はどうすればいいのだろうか?
 残念ながらこれは発想の問題なので僕から言えることはほとんどない。
 だが、これではあまりに無責任であるため以下にいくつか考えられる方法を記してみた。参考になれば幸いである。

 映画でも小説漫画でもどれでもいい、自分が好きな物語をベースにイメージを膨らませるのが最も手軽かつ有効な方法であろう。
 ただ一つ注意してほしいのが物語全部をそのままシナリオにしようと思わないことだ。物語として完成したひとつのシナリオは、それはもうシナリオではなく小説だ。キャスト達の入る余地が無ければしょうがない。
 TRPGはお互いがロールプレイをしあい、物語を紡いでいくもので一方的に語り続けるものではないのだ。
 こういった吟遊詩人プレイを回避するためには、物語そのものをシナリオにしようと思うのではなく出てくるキャラクター、出てくるセリフ、その作品のテーマ等その作品の一部に絞ってイメージを膨らませるとよいだろう。

 もしくは、一緒に遊ぶ仲間からどんなシナリオを遊びたいのか?と聞いてみるのもいい手だ。
 つまり一緒に遊ぶ相手からこういうシナリオを遊びたいといわれて、それをベースに作ればその相手と遊ぶときには成功率が上がるのは当然のことだろう。
 ただし、それに縛られすぎてシナリオがかけなくなってしまっては本末転倒だ。参考にするのはよいが、参考程度にとどめておくのが吉であろう。

 それでもどうしてもしっくり来ない場合は、適当にテーマを定めてしまうことだ。
 もっとも、テーマを定めろといわれてもそれが定まらないから困っているのだろう。だから、昔僕が用いた簡単な方法を紹介しようと思う。
 ニューロデッキをよくシャッフルして一枚引いて、そして引き当てたスタイルを手がかりにイメージを広げてみるのだ。
 そのスタイルのタロットの意味、そのスタイルのスタンダートなキャストはどんな物語だと活躍できるのか、そのスタイルを持つゲストは一体誰がいるのか。見るべき場所は色々とある。
 これらを手掛かりとすれば意外にイメージが膨らみシナリオを作りやすいと思う。


イメージを膨らませる

 先ほどシナリオのイメージを3つに分類した。その理由は先ほどイメージをカテゴライズすることで自身のイメージを明確化するためと書いた。
 だがこれにはもうひとつの理由がある。イメージをカテゴライズすることで、自分のイメージで足りない部分を自覚し、それを補完することでさらにイメージを膨らませることができるようになるのだ。

 これまでオフィシャルで提供されてきたシナリオの数は非常に多い。もちろんその中には名作と呼ばれる優れたシナリオも多数存在する。そして、それらには例外なくひとつの共通した特性が存在していた。
 それは、そういったシナリオは先に挙げた「シーン」、「テーマ」、「ゲスト」という3つの要素の全てを兼ね備えているのである。
 つまり、そのシナリオで最も見せたいと思う武器となるような「シーン」、そのシナリオに一本通るような「テーマ」、そして魅力的な「ゲスト」。優れたシナリオを作成するためにはこの3つの要素は必要不可欠なのだ。

 実のところを言うとこの3要素が揃っていなくても一応シナリオは書ける。だが、この3要素を念頭において書いた方がいいシナリオが書ける。少なくとも僕はそう思っている。
 事前にこの3要素のうち足りないものがあった場合は、既にあるイメージから他の要素を満たすようにイメージを膨らませていくとよいだろう。

例)
 ゲストが決まっている場合、そのゲストが戦う理由を考える(ゲスト→テーマ)
 ゲストが言いたい台詞を考える(ゲスト→シーン)
 いいセリフが思い浮かんだ時に、その台詞をいうのはどんな奴なのかを考える(シーン→ゲスト)


テーマについて

 さて魅力的なゲストや、一番魅せたいシーンというのは具体的にどんなものなのかはイメージしやすいと思う。
 だが、テーマに関しては一口にテーマと言ってもピンと来ない人もいるだろう。そこで、テーマについて簡単ながら補足説明をしよう。

 テーマというのは簡単に言ってしまえば「そのシナリオの芯となるもの」である。
 芯になるものと言っても色々とあるが、例えば「復讐をテーマにしたもの」みたいな漠然としたものでもいい。例えば「○○みたなもの」というような小説などの既存の作品みたいなものでもいい。
 3要素が必要と言っておいてこういうのを言うのはなんかもしれないが「こんなゲストが大活躍する話」でも「こんなシーンがあるシナリオをやりたい!」と言うのも立派なテーマの一つだ。

 要するに、そのシナリオを作る上で中心となる何か。それがテーマである。
 これはシナリオを作る前に明確に意識しておくとそのシナリオの完成度は飛躍的に上昇する。このテーマという概念を用いたシナリオテクニックについてはまた次回以降に具体例を挙げて詳しく書いていこうと思う。


3要素とルーリング

 シナリオ作成とは少し離れるが、実はこの3要素というのはRLをする際にも非常に役に立つ。
 遊ぼうと思うシナリオのテーマ、一番見せたいと思うシーン、またそのアクトで魅力的なゲストを事前に意識して念頭に置くことで、ただ無意識的に読むよりもシナリオ作成者の意図を汲み取りやすくなるのである。
 そうしてシナリオ作成者の意図を理解すればよりスムーズにルーリング出来るようになるだろう。


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