シナリオ作成講座―シナリオプロットを作成する―
Gray RoomN◎VAサポートコラム

 さて、前回シナリオのイメージを実際に書きだしてみた。
 今回はそのイメージメモを元に推奨スタイルやキャストモチベーションなどを考え、シナリオの骨子となるプロットを作成する方法について考えていこうと思う。


推奨スタイル決定のテクニック

 プロットを作成する時点ではもう推奨スタイルが決まっていることが必要条件となる。
 一応シナリオメモを作成した際、既にPC@〜Bくらいまでは推奨スタイルやどういうタイプのキャストを参加させたいか既に決まっているのではないかと思う。
 だが、それがPCC以降ともなるとなかなか決まりにくいものだ。
 そこで、ここではシナリオを選ばずに使える汎用性の高い推奨スタイルと導入について考えていこうと思う。

カタナ&カブトワリ
 いわゆる荒事枠と呼ばれる枠。こいつを殺してくれという殺し導入が一般的な導入だ。
 この時のターゲットによって色々とバリエーションを持たせれるが、クライマックスで登場する敵ゲストの殺し依頼だとクライマックスでモチベーションが生かされるので有効な方法だと言える。反面、リサーチフェイスですることがなくなりかねないのが難点。このターゲットはただのターゲットでなくライバルだったとか、もしくはものすごくインパクトのあるキャラにすればこの問題はある程度解消される。
 もしくはターゲットをキャストもしくは味方ゲストを設定して、実は依頼人に騙されていたという導入も比較的楽な導入であると言える。この場合は借りを返すという、復讐モチベーションだけで結構アクトに参加しやすい。もっとも殺されたくない相手を標的にした場合、殺すことを諦める為の理由はちゃんと考えること。一度依頼を受けた以上、その依頼を反故にするのはプロとしての矜持に反することになることが多いからだ。
 アストラル系のアクトの場合はバサラも同じような導入が出来る。

クグツ&イヌ
 雰囲気は違うが、導入方向自体は一緒なのでまとめて紹介する。
 両方とも上司から命令を受けてシナリオに参加し、そして事件を終わらせることでモチベーションが達成されるのが一般的なパターンだ。どちらも、イベントがなくても納得できるような枠なので注意しなくてはならない事項は少ない。
 ただ、イヌはともかくクグツはちゃんとモチベーションをチェックしないと、気がつかないうちにモチベーションが切れてしまっていたということも起こりうるので注意すること。

フェイト
 似たような導入にトーキーもあるがこれはちょっと特殊なので後述する。
 フェイトはクグツ&イヌに似ているが、命令ではなく依頼となるのが違う。依頼が命令とは大きく異なっているのは、依頼を持ち込む人間が特定されていないということだ。
 クグツは早川美沙、イヌは千早冴子。命令を下す人間というのは大体枠によって決まっている。
 しかし、事件の依頼を持ち込む依頼人はシナリオによって違う。カーロスなどよく使用されるゲストはいるが、それでもそのバリエーションの幅の広さは命令とは比べものにならない。
 そのためPC番号が大きい場合は事件そのものの本筋を直接ではなく、その事件背景の説明などに使用できる。
 また依頼人を凝ることで枠の魅力を持たせたり、もしくは依頼人を通してシナリオのキーに絡み当事者性を獲得しやすくなるなどのテクニックを利かせることが出来る。
 とりあえず、「誰から」「何のために」「何をすればいいのか」の三つのポイントを考えておくとよい。
 ニューロも依頼導入で同じようなテクニックを利かせることが出来る。この辺は枠の兼ね合い(神業含む)や、アクトの雰囲気などで考えてしまってよいだろう。

トーキー
 トーキー枠は先ほどに挙げたクグツ枠などの命令実行型、フェイト枠などの依頼代行型に似ている。だが、彼は他のスタイルとは大きく違う点がある。
 それは目的だ。
 命令実行型のキャストは命令をこなすことが目的だ。依頼代行型のキャストは依頼をこなすことが目的だ。
 しかし、トーキーは≪暴露≫して世界を変えることが目的だ。まぁ、これは一種の依頼と言ってもいいだろうし、言い換えれば命令と言えるかもしれない。だがトーキーだけは命令などの押しが無くても自発的に動けるスタイルである。これは重要なことだ
 イヌは命令が無ければその権力を行使できない、クグツは命令が無ければ動く理由がない、フェイトは依頼などのきっかけが無ければ事件に首を突っ込まない。だが、トーキーだけは命令が無くても、依頼でなくても、日々太平な時でも事件を探し、そして事件に首を突っ込む。それがトーキーというスタイルなのだから。
 現在、オフィシャルシナリオで最も多用されているスタイルはトーキーだ。それは、このように手軽にアクトに参加させれるという当事者性の獲得しやすさにあるのだろう。
 ただし、トーキーの目的は≪暴露≫で世界を変えることであることを忘れてはいけない。そのためには≪暴露≫したいという魅力的な事件でなくてはならず、そして公開出来る事実でなくてはいけない。それだけは注意すること。


First Friend推奨キャスト用メモ

・コンセプトの時点でPC@がニューロなのは確定

・企業が絡むのでクグツ枠も確定

・友情話でも陰謀話でも≪暴露≫したくなる事件だと思うのでトーキー枠を設定

・アスタロテから依頼される枠が欲しい。アクト的にニューロはありだが、既に設定しているのでフェイト枠を設定

・命令モチベーション、依頼モチベーション、トーキーを設定しているのであとは私情というか、命令とかではなくアクトに絡める枠を設定する。

→テラウェアの新型兵器によって部隊を全滅させられたイヌ枠を設定


推奨スタイルの神業

 オフィシャルの記事でも何度も触れられている話ではあるが、神業はキャストの一番の見せ場である。
 キャストの神業は自発的にでもカッコよく演出できる人もいるだろうが、やはりシナリオで神業の見せ場を設定した方がはるかに盛り上がる。また、自発的に神業の演出をするのは苦手だというPLも少なくない。
 そこでシナリオで、各キャストごとに神業をうつ見せ場を設定するとよい。この際、各キャストごとに推奨スタイルがあり一発は神業が分っているのだからその情報を有効に使うのがよいだろう。
 以下によく推奨されるスタイルと、それらの神業を使用させるシチュエーションの指針などを挙げてみた。

バサラ
 ≪天変地異≫を打ち消す、100人以上の規模のトループ1グループを排除するなどが一般的な使用シチュエーションだ。
 また、カット進行中でも普通に使用できるためシチュエーションが無くても結構何とかなる神業である。

カブト
 意外に忘れられがちだが、カブトはやはり護衛対象を≪難攻不落≫して守りたいものだ。
 護衛対象を≪難攻不落≫するシチュエーションをセッティングするとよいだろう。

カタナ&カブトワリ
 普通にカット進行で使用できる神業だ。カット進行中に使えば十分に見せ場になるのであまり気にする必要はない。
 ただし、即殺神業が余る場合なども想定できるのでその場合はトループを若干多めに出すなどといったテクニックが必要になる。

フェイト
 神業で隠された情報を抜くのに使用されるであろうが、注意するべき点は基本的に「人に対して使用する神業」であるという点だ。シチュエーションはちゃんとセッティングしてあげるとよいだろう。

クグツ
 ブラックオペレーションならばその事実を、もしくは他の企業の機密を奪い取るなどの使用法がある。

イヌ
 カット進行に参加しなかった事件の黒幕に≪制裁≫をうつというのがやはりイヌ冥利に尽きるだろう。もしくは不当な社会戦ダメージを消去するのもちゃんとシーンをセッティングしてあげれば非常にカッコいい
 リプレイ「スリードッグナイト」などでも用いられ現在は一般化しつつあるテクニックだが、隠されたアドレスを入手するという使用法もある。

トーキー
 先述したとおり。事件に魅力があれば普通に≪暴露≫は上手く使用されるだろう。
 また、ちょっと凝ると非常にテクニカルに≪暴露≫を使わせることも出来る。これはトーキーSSSの二本が参考になるであろう。

ニューロ
 神業で隠された情報を抜くというのが一般的かつ無難な使用方法だ。もしくは神業で隔絶された場所へ登場するというパターンもある。
 ちょっと面白いところでは電制のあるアイテムを破壊するという使用法もできる。


First Friend神業用メモ

・≪電脳神≫はシナリオコネにかけられたプロテクトを解除するのに使用する

・≪制裁≫は黒幕であるマッドサイエンティストに使用する

・≪完全偽装≫はクライマックスの舞台へ行くのに使用する

・≪真実≫はニューロのシナリオコネ=テラウェアの新型兵器ということを明かすのに使用する

・≪暴露≫はエンディングなり何なりで使用されるはず


キャストモチベーションの確認

 さて、キャストの推奨スタイルが決まったら具体的にプロットの作成に入ろう。
 まず確認するべきはキャストのモチベーションだ。これは非常に重要なポイントで、モチベーションが薄い場合はよほど熟達したPLが場を見て楽しめるというPLでもないとつまらないと感じてしまう。そして、TRPGはその性質上卓のメンバーのうち一人でも楽しめていないと場の空気は壊れてしまうことが多い。
 つまり、このモチベーションがアクトの成否を分けると言っても過言ではないのだ。

 まずはOP時点でのモチベーションを書きだす。このうち、途中で目的が達成されるもしくは変更されるなどいう場合はそれを書きだす。
 そして、全てのキャストがアクトの最後までモチベーションが維持できるかを確認する。もしも途中でモチベーションが切れている場合は多少強引でもいいのでちゃんと新たなモチベーションを与えること。


First Friendモチベーションメモ

・ニューロ枠
 1.アルバの行方を捜す
 2.アルバ=サイクロプスを突き止めた場合彼を救う

・イヌ枠
 1.サイクロプスを捕まえる
 2.サイクロプスが軍事プログラムでプロテクトされたAIだと気がついたあとは彼を利用しているデンゼルを捕まえるモチベーションにシフト。デンゼルはとことんまで悪い奴にするとモチベーションシフトが楽か

・クグツ枠
 1.徹頭徹尾テラウェア、“21”との対決モチベーションを通す。

・フェイト枠
 1.ニューロ枠と同じ。動機が依頼モチベーションのため一歩引いた立ち位置で『ニューロ』をサポートする枠を想定

・トーキー枠
 1.サイクロプス事件を追う、サイクロプスが凶悪なだけのサイバーサイコではないと言う情報を持っている
 2.十分にショッキングな事件だと思うので≪暴露≫のパーツとしては十分なはず


イベントマップと合流のビジョン

 さて、モチベーションが確認できたら想定しているイベントを列挙してみる。
 この時どのタイミングでキャスト達が合流できるかまでを想定しておくとよい。

 大体イベント数の目安としてはRLシーンを除いて3〜5個くらいを想定するといいだろう。
 もっとも、プレイ環境やシナリオ作者の好みによって適正シーン数は変わるものだ。あくまでこれは目安であって杓子定規にこの数字にこだわる必要はない。

 一応過去の経験から、シーン数の指針を言わせて貰うと

・キャスト間対立など、キャスト同士でのドラマに重点を置いたシナリオはイベントシーンは少なくてもよいし、また不必要に多くするべきではない。イベントシーンが少なくてもこういうシナリオではキャスト側からシーンの提示があるし、またイベントシーンが多すぎる場合はキャスト側からシーンの提示がしにくくなるからだ。
 ただし、同時にキャストモチベーションの管理には細心の注意を払う必要がある。なぜならばこういうシナリオの場合はキャストがアクティブに動くことがほぼ前提となっているからだ。キャストモチベーションが薄いと思った場合はそれを補強するイベントなどを挿入するとよい。
 また、こういうシナリオはRLに非常に繊細なハンドリングを要求する。事前にある程度キャスト側がどういうシーンをやりたいのか想定し、そしてシナリオが停滞しそうになったらそういうシーンを“提案”するなどのテクニックが必要になるだろう。

・逆に、ゲストとキャストの双方向の絡みでドラマを構築するシナリオは逆にイベントシーンを多くする必要がある。ゲストとキャストがお互いに交流できるシーンを増やすことでゲストを印象付けないといけないからだ。
 ただし、物語の主役はあくまでキャストである。ゲストを演出するのはよいが、そのロールプレイなどがキャストとの双方向性があるかどうかは常に気をつけておくべきだ。


プロットの完成

 ここまで書いてきたものをまとめればプロットが完成する。


・基本プロット

 AIと人間の異種族間交流と友情の話をベースに、AIを兵器利用する話を絡める。兵器利用の具体案はテラウェアが開発した新型義体制御用AIの話にする。
 凶悪に見えたサイバーサイコが実は……という感じで演出する。

・3要素

・シーン:
 クライマックスフェイズ。「AIなぞ所詮兵器に過ぎない」というマッドサイエンティストに『ニューロ』が反論するシーン

・テーマ:
 AIと人間の異種族間交流と友情の話

・ゲスト:
 AIを道具として扱うベタベタに悪いマッドサイエンティストは対峙して面白いはず。
 任務至上主義ではなくちょっとアウトロウ気味なクグツはキャストと上手い感じに対比できるだろう。

・推奨スタイル

ニューロ:フリーランスのハッカー、非AIが望ましい
 シナリオコネ:アルバ/クラブ(友人)

イヌ:ブラックハウンド機動捜査課
 シナリオコネ:サイクロプス/クラブ(宿敵)※実は恐れられている意味でのクラブ

トーキー:フリージャーナリスト
 シナリオコネ:アルファ=オメガ

クグツ:千早重工後方処理課第三班
 シナリオコネ:“21”ブラックジャック

フェイト:探偵
 シナリオコネ:アスタロテ

・推奨スタイル神業

ニューロ:
 ≪電脳神≫はシナリオコネにかけられたプロテクトを解除するのに使用する

イヌ:
 ≪制裁≫は黒幕であるマッドサイエンティストに使用する

トーキー:
 ≪暴露≫はエンディングなり何なりで使用されるはず

クグツ:
 ≪完全偽装≫はクライマックスの舞台へ行くのに使用する

フェイト:
 ≪真実≫はニューロのシナリオコネ=テラウェアの新型兵器ということを明かすのに使用する。

・イベントシーン

・RLシーン(OP)
 サイクロプスが研究所を闘争する

・イヌ(OP)
 部隊をサイクロプスに全滅させられる

・トーキー(OP)
 イヌのOPを目撃、サイクロプスに追いかけられる

・RLシーン(OP)
 サイクロプスを“21”が確保する。

・クグツ(OP)
 “21”との対決を指示される

・フェイト(OP)
 アスタロテからアルバ捜索を依頼される

・ニューロ(OP)
 アルバとの交流シーン。彼との関係はこのシナリオのキーなので1シーンかけて演出。

・ニューロ(RP)
 アスタロテからアルバの情報を受け取りフェイトとの合流を示唆する。

・イヌ(RP)
 モチベーションを補強するために墓参りのシーンを挿入する。この時点でクグツかトーキー辺りが合流できる流れになるとよい(リサーチ項目などで誘導)。

・任意(RP)
 キャスト達が合流しリサーチが一段落ついた時点でサイクロプスの襲撃。サイクロプス=アルバの情報を確信するシーンでもある。

・ニューロ(RP)
 アルバとの交流シーン。人殺しが嫌いで、人間が大好きな彼を演出することで、そんな彼に殺しを強制しているマッドサイエンティストに怒りを覚えてもらうのを目的としている。

・クグツ(CP)
 ≪完全偽装≫でクライマックスへ

・クライマックス(CP)

・トーキー(EP)
 ≪暴露≫の演出。アルファ=オメガとの会話、

・フェイト(EP)
 アスタロテとの会話

・クグツ(EP)
 新たな任務へ

・イヌ(EP)
 冴子との会話

・ニューロ(EP)
 アルバとの会話


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